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東京高等裁判所 昭和47年(ラ)191号 決定

抗告人 小池太市

相手方 旭紳航空株式会社

主文

本件抗告を棄却する。

理由

抗告の趣旨と理由は別紙記載のとおりである。

本件差押命令申請書および抗告状によれば、抗告人は、相手方が航空法の規定により免許をうけた不定期航空運送事業および航空機使用事業の営業権、すなわち右両事業を経営する権利自体の差押を求めていることがわかるのであるが、一般にかような包括的財産は強制執行の目的に適しないのみならず、本件の営業権に関しては、航空法一二二条一項、一二四条一項、一一三条一項、一一四条一項は、右各事業の免許をうけた者は事業を自己の名で他人に経営させることができず、かつ事業の譲渡は運輸大臣の認可があつたときに効力を生ずる旨を定めているので、裁判所がこれを換価したり、あるいは管理人を任命して収益させるに適しない権利といわなければならない。したがつて、右営業権の換価や強制管理を目的とする差押も、これを許すべきでないから、本件申請を却下した原決定は相当で、抗告は理由がない。

よつて主文のとおり決定する。

(裁判官 近藤完爾 田嶋重徳 吉江清景)

(別紙)

抗告申立の趣旨

原決定を取消す

別紙債権目録による差押命令を許可する

旨の裁判を求める

抗告の理由

一、被抗告人(債務者)は第三債務者から受けた別紙債権により、航空機二機(JA3398。JA3484)を東京株式会社日本リストより月各金壱五万円の賃料で常時賃借し、外に季節的に壱機(JA3484)を新潟通信機(株)より臨時に賃借して営業を営むことにより社会的の信用を得ているものである。

二、抗告人は被抗告人に対し、新潟地方裁判所昭和四六年(ワ)第三三四号貸金事件の執行力ある判決正本に基き、金弐〇八万円也及び外に内金一九六万円に対する昭和四六年四月一六日から、内金一二万円に対する同年五月二九日から各完済に至る迄年三割六分の割合による債権を有するものであるが、被抗告人は弁済の履行を為さず、且又不動産、有体動産等全く無く、営業について航空機の飛行する時は既に賃料を取得した後である。

以上の営業内容であつて任意に履行を為さない限り債権者から執行を受ける恐れなき地位にある為め尚履行の請求に応じないのである。

抗告人は前記債権の回収の為めには、別紙営業権の差押命令を受けて更に管理命令を求める以外に方法はないものである。

三、尚被抗告人は商号を変転として変更して来た特異なところは原審申請書添付の法人登記謄本により明らかであるが、航空規定により同種業務に一ケ年以上参加した者は別紙第三債務者の許可を譲り受ける事が可能である、右悪意ある被抗告人代表取締役木暮素明は昭和四六年七月二七日現職に就き同四七年七月二七日に至れば別紙債権を詐害の目的に個人の所有に帰する可能性も十分に推定されるので第三債務者に対し差押命令の送達の無い場合は、国の許可を得て営む営業者を信頼して取引を為した債権者である抗告人は、悪意者の法の乱用の罠に陥ると云う社会的矛盾がある。

四、別紙差押債権は民事訴訟法第六一八条の差押え禁止に該当するものでなく同法第六二五条(1) 及び(3) の準用により、国家機関の営業信頼の抗告人を保護する為め抗告の趣旨による裁判を求める為め本申立をいたします。

債権目録

債務者が第三債務者に対して有する左記免許書によつて営む営業権

昭和四三年五月一七日、空監第一八七号免許により

(一) 不定期航空運送事業及び航空機使用事業は航空法第一二一条第二項に基く

(二) 条件

事業区域は新潟県、山形県、秋田県、福島県、長野県とする

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